つかさの独り言




故郷は遠くにありて…

故郷は遠くにありて想うものってよく言うけど、僕の場合はチョッと違うんだ。あえて言うならば、故郷は近くにありて遠きかな…。僕の故郷は、すぐ隣の富山県富山市…車でいけば、一時間もかからないのに…。寝たき りの闘病生活を送っている僕には、あまりにも遠すぎて手が届かない。イヤ、手を伸ばす事すら出来ない!故郷を離れて10年、正確に言えば帰れ なくなってからか…。早いもんだ10年って、あっと言う間だったな…。 考えてみれば、不思議なもので年齢を重ねるたびに、時間が経つのが早く 感じるようになって。何かずいぶん遠くまで来ちゃったなあ…。子供の頃 は、あんなにもゆったりと時間が過ぎていたのにね。故郷、富山で無邪気 に遊んでいた日々がすごく懐かしい。故郷はやっぱりいいよね!

でもね、子供の頃は正直言って、あまり富山の事が好きじゃなかった。何となく暗くて、田舎臭くってダサイと思ってたんだ。地方に住んでる人は 誰だって一度ぐらいは、故郷を出てもっと大きな都会で自分を試してみたい、そう思うもんじゃないのかな…。まあ、僕の場合は病気療養のために 仕方なく、富山を離れる事になったんだけど…。それでも最初は、何かが 変わるんじゃないかって、大きな期待をしてたんだ…。でも、その期待はすぐ裏切られた。確かに、生活は大きく変化したけど、まさか、こんなに も長くて厳しい闘病生活が、続くなんてその時は夢にも思わなかったけど ね…。今になって、つくづく思うよ。故郷は、やっぱりいいよ!最近は、夢にまで出てくるようになった。夢の中じゃ、子供の頃に戻って学校のグラウンドや昔、住んでた家の周りを走ってるんだ。今は寝たきりなのに、足の感覚はしっかりと残ってる。不思議なもんだ…。あともう少し遊んでいたいなあ…そう思った瞬間に決まって目が覚める。そして、涙で枕がぬれている事に気づいてドキッとする。つかの間のタイムトリップ…。

故郷は近くにありて遠きかな…。高速道路のトンネルを抜けて、パッと眼 前に広がる立山連邦の絶景が今も目に焼きついて離れない。みんなも、忘れられない故郷の風景の一つや二つは持っていると思うけど、大切にして 欲しいな…。僕は、故郷を離れて10年以上、帰りたくても帰れないんだ から…。失ってみて初めて、失ったものの大きさやありがたみに気づかさ れる。寝たきりになって、失ったものの大きさに気づいて今さらながらに愕然とする今日この頃…。

でもね、失ったものを嘆いても何も始まらない!今はただ…自分の出来る事を精一杯、悔いのないようにやるだけさ。そして、いつの日にかもう一度あの立山連邦の絶景を見る瞬間が来る事を信じて、僕は、今日も泣いたり笑ったりしながら、一生懸命に生きてる…。

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